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イラク支援活動者の高遠菜穂子さんの講義を聞いて。
私はどこかでアメリカのイラク攻撃に対して「自分とは遠い外国で起きている惨事」だという印象を持っていた。しかしそれは間違いだった。日本も小泉首相がその攻撃に参加表明をしている。その上、アメリカ・イギリスのブッシュとブレアが、「イラク攻撃は間違いだった。イラクの大量破壊兵器保有は嘘だった」と2005年にその誤りを認めた後も、日本はいまだにその誤りを訂正していない。日本は本当に卑怯なことをしたと思ったし、私たち国民がそれに対し正しい知識を持ちえず、いまだに認識ができていないことは、あるまじきことだと思った。
 講義中、就職活動のためにスーツを着た学生が、大笑いをして雑談していた。普段なら気にも留めない。しかし、高遠さんが瞳を潤ませ、イラクでの出来事を話しながら突然嗚咽した瞬間、彼女たちはハッとし、前を向き、周りを見渡した。そしてその涙声を聞いているときだけ借りてきた猫のように静かになった。後半、また雑談を再開した。
 スーツを着て、就職活動の話をしていた彼女たちは、日本経済新聞を読まなきゃだとか、OG・OBの訪問をして話を聞いてもっと知識を深めたいだとか言っていた。しかし、高遠さんの、日本人として聞かなければいけない話は聞かない。彼女たちの知識欲のアンテナは、高遠さんの「真実」についての話には反応しなかったのだ。私たちの功罪を一身に受け止め、兵に拉致されたことを母国日本のマスコミに批判され、危険な支援活動を行ってきた高遠さんのお話を聞くことはしないのである。私たちはイラクに対しても、その戦争で傷ついた人たちに対しても、世界に対しても、高遠さんに対しても、卑怯なことをし、見たくないものを見ないよう目を瞑ったのだ。「就職」のために日本経済新聞を読むことより、この講義を聴くべきであるのは誰でも分かる。その「真実」を知ることは、私たちのやらなければいけないことだからである。
私はこれをとても残念だと思った。同じ年の、これから社会に参加していくであろう彼女たちは、どうやって社会に貢献するのだろう。社会に貢献するために就職するのではなく、キャリアアップしたいから就職するのか、当たり前だから就職するのか。激しい憤りを感じた。
この講義で、今まで知らなかったことを多く知ることができたし、意識も変わった。しかし私が声を大にしていいたいのは、私たちはかつて、そしてもしかしたら今も、自分たちがした無知な行動から引き起こされた悲惨な「真実」に対し目を反らし続けているということである。
by maaaayu1211 | 2012-01-06 11:24
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