公共図書館の想定している利用者は、身近な地域住民であり、不特定多数の利用に供することを目的としている。図書館には、公共図書館のほかに、不特定多数の利用でなく国内出版物の網羅的な収集を最大の目的とした国立図書館、特定の分野に特化した資料収集を行う専門図書館、学生の利用を目的とした学校図書館・大学図書館があるが、不特定多数の利用を目的としているのは公共図書館のみである。公共図書館が、知識の専門性を利用者に問わない、自国文化を代表する施設であるからこそ、経営の視点から見ても、「民間に委託すれば合理化できて良い」「官僚制でないとサービスが低下するから駄目」などと、一概には言い切れない。公共図書館が、「合理的」で「文化的」であるためには、行政と民間の短所・長所を客観的に認め、それらを織り交ぜて新しい体制を作るための行政改革が必要である。
まず、公共図書館の行政改革が本当に必要であるかだが、司書課程科目を履修している最中の、一利用者という立場にいる私は「必要」と考える。現在、多くの公共図書館の経営は、民間ではなく、行政のもとで行われている。利用者である私は、現在の公共図書館経営は、行政のメリットを最大限引き出せず、中途半端になってしまっていると感じる。実際にどのような点が、利用者である私に、行政のメリットを最大限に引き出せていないと感じさせたかを挙げる。「サービスの品質の低さ」である。図書館員は本の貸し出しを効率よく行うために存在し、行政である最大のメリットである「高品質なサービス」を提供できていない。生活水準も高く、ほとんどの国民が義務教育を受けている日本では、図書館員が行うべき「サービス」が一体なんなのかを、図書館員自身が決めかねているのではないだろうか。しかし、国の文化の向上という重要な役割を持つ公共図書館であるからこそ、新たなサービスのあり方を模索し、新規事業の発案を行っていくべきであろう。どちらにせよ、公共図書館がサービスのあり方を決めかねているうちは、行政管理下であることのメリットを引き出せない。そういった見直しも含めて、この状況の打開のために、行政改革が行なわれるべきである。 前述の通り、今まさに公共図書館は「新たなサービスの提供」を求められている。その達成のためには、本の貸し出しなどの単純作業だけでなく、予算・人員・権限の自由裁量、事後的統制を行い、新規事業を発案し、それを新たなサービスとして展開していく人材が必要とされる。今の公共図書館は、十人の職員がいても、事業発案は一本といった状況である。日本の官僚制の特徴として、限られた資源を総動員して目標の実現を目指す「最大動員型システム」、「省」「課」などを単位として業務上の権限と責任を決める「大部屋主義」があるが、こういった特徴を持つ組織のなかでは、事業発案という個人単位の能力を育てることはできない。民間委託によって、図書館にデメリットを与えうるこれらの特徴を回避し、図書館にとって必要な人材を取得・育成することが必須となる。 また、競争原理を導入することで、アウトカムの重視が自然と行なわれるようになる。サービスの向上に向き合うためには、今後その必要性が問われてくるだろう。民間と行政は、非営利・営利の違いがあるが、競争原理さえあれば、本質的には変わらないのである。
by maaaayu1211
| 2011-07-24 04:44
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